なぜ動画や配布ページには独特な言葉が並ぶのか

お気に入りのボカロ曲に出会ったとき、「自分でも歌って投稿してみたい」「もっと色々な派生動画を聴いてみたい」と感じる方は多いのではないでしょうか。

しかし、いざ原曲の動画概要欄や配布サイトを開いてみると、「本家」「off vocal」「ワンコーラス」といった言葉が並んでおり、どれを再生すべきか、あるいはどのファイルをダウンロードすればよいのか迷ってしまうことがあります。

これらの用語は、原作者であるボカロPへのリスペクトを示したり、作品の形を正確に伝えたりするために、コミュニティの中で自然と定着してきました。言葉の意味を正しく理解しておくと、自分に合った音源をスムーズに選べるようになり、動画を探す際にも迷わなくなります。

今回は、楽曲を探すときや歌ってみたの準備を始めるときによく目にする基本的な用語を、わかりやすく整理して解説します。

原曲と派生作品を見分ける言葉

まずは、動画を鑑賞するときや、自分の動画を投稿するときに欠かせない「作品の位置づけ」を表す言葉です。

本家(ほんけ)

ボカロ文化において「本家」とは、その楽曲を最初に制作・発表したボカロPによるオリジナルの原曲(またはその動画)を指します。

敬意を込めて「本家様」と呼ばれることが多く、歌ってみた動画を投稿する際には、概要欄に原曲のタイトル、ボカロPの名前、そして本家動画へのURLを記載するのが大切なマナーとされています。リスナーにとっても、派生動画から原曲の素晴らしさに触れるための道しるべとなります。

コラボ

「コラボレーション」の略で、複数のクリエイターが協力して1つの動画を作り上げる形式を指します。

歌ってみたにおいては、2人以上の歌い手がパートを分けて歌う「コラボ歌唱」が代表的です。また、歌い手だけでなく、イラストを描く絵師、動画を作る動画師、音を整えるMIX師など、異なる役割のメンバーが集まって作品を完成させることも広義のコラボレーションといえます。

概要欄に参加者全員の役割やアカウントへのリンクが並ぶことが多く、それぞれの持ち味が合わさった特別な作品として親しまれています。

楽曲の「長さ」を表す言葉

動画のタイトルや説明文には、楽曲のどの部分を歌っているかを示す言葉がよく使われます。制作にかかる時間や作品の雰囲気が大きく異なるため、自分の目的に合わせて確認しましょう。

フル(Full)

楽曲の最初から最後まで、1曲すべてを通して演奏・歌唱されている状態を指します。

ボカロ曲の世界観を余すところなく表現できるため、歌ってみたの投稿では最も標準的な形です。曲の展開や感情の起伏をじっくり楽しみたいリスナーからも好まれます。一方で、歌唱や音声編集の負担は大きくなるため、じっくり時間をかけて完成させたい方向けの形式です。

ワンコーラス(One Chorus)

曲の冒頭から1番のサビの終わりまでを歌う、短尺の形式です。

フルサイズに比べて短い時間で制作できるため、「まずは練習として短い動画を投稿してみたい」「SNSの手軽な動画投稿機能で披露したい」という場合に選ばれます。タイトルに「ワンコーラス」や「1chorus」と明記しておくことで、リスナーにも「1番のみのショートバージョンであること」がひと目で伝わります。

歌う人がダウンロード時に見かける音源の言葉

ボカロPが公式に公開している音源配布ページに行くと、さまざまな名称のファイルが用意されています。ここでは、歌ってみた制作で必須となる用語を解説します。

off vocal(オフボーカル) / inst(インスト)

原曲からボーカル(歌声)を除いた、伴奏(楽器演奏)のみの音源のことです。「インストゥルメンタル(instrumental)」を略して「inst」と表記されることもあります。

歌ってみたを制作する際は、この音源に合わせて自分の歌声を録音します。動画サイトから直接音声を抜き取るのではなく、必ずボカロPが配布している公式のoff vocal音源を使用してください。

コーラスあり(+chorus)とコーラスなし(no chorus)

配布されているoff vocal音源には、いくつかバリエーションが用意されていることがあります。

  • コーラスあり(+chorus): 原曲のバックコーラスやハモりの声が、伴奏と一緒にあらかじめ入っている音源
  • コーラスなし(no chorus): バックコーラスも含め、完全に歌声が入っていない伴奏だけの音源

自分でハモりやコーラスをすべて録音したい場合や、MIXを依頼して細かく音を作りたい場合は「コーラスなし」を選びます。一方、録音の負担を減らしたい場合や、原曲のコーラスをそのまま活かしたい場合は「コーラスあり」を選ぶとスムーズです。

迷わず制作・鑑賞を楽しむためのポイント

これらの用語を把握したうえで、実際に曲を歌ったり共有したりする際には、次の2点に気を配りましょう。

  • 利用規約(ガイドライン)を最初に読む ボカロPによっては、動画概要欄や配布ページに「歌ってみたへの利用条件」「キー変更の可否」「商業利用に関する注意」などを記載しています。音源をダウンロードする前に、必ず目を通してください。
  • 動画の形をタイトルや説明文で明記する 「【ワンコーラス】」「【コラボ】」などの表記をタイトルに入れると、視聴者が探している動画と一致しやすくなります。あわせて本家へのリンクを記載することで、文化に沿った気持ちのよい交流が生まれます。

用語の意味がわかると、配布ページの意図がすっきりと見え、作品探しや制作準備がずっと快適になります。ぜひお気に入りの楽曲を見つけて、ルールとマナーを守りながら表現を楽しんでみてください。