動画の形やバージョンを表す言葉を知る大切さ
ボカロ曲や歌ってみた動画を探していると、動画のタイトルや説明欄にさまざまな用語が並んでいるのを目にします。「本家」「off vocal」「ワンコーラス」「コラボ」といった言葉は、その動画がどのような成り立ちで作られ、どのような形式で公開されているかを示す大切な手掛かりです。
これらの言葉を正しく知っておくと、目当ての動画を探しやすくなるだけでなく、自分自身が歌ってみたに挑戦するときにも、どの音源を使い、どのように動画を説明すればよいかが明確になります。今回は、動画の「形」や「バージョン」に焦点を当てて、基本となる用語をわかりやすく解説します。
原曲とカバーを区別する用語
まずは、楽曲そのものの立ち位置や関係性を示す言葉です。ボカロ文化では、最初に発表された楽曲と、そこから生まれた二次創作を明確に区別する習慣があります。
本家(ほんけ)
ボカロPが制作し、最初に公開された大元のオリジナル楽曲(原曲)を指します。動画説明欄に「本家様」と敬称をつけてリンクを貼るのが、歌ってみた文化における長年のマナーとして定着しています。「まずは本家を聴いて世界観を味わう」というリスナーも多く、文化の根幹にある存在です。
カバー / 歌ってみた
ボカロPが公開したオリジナル曲を、歌い手が自分の歌声で歌唱した動画全般を指します。「カバー」は音楽全般で使われる一般的な言葉ですが、ニコニコ動画やYouTubeなどのコミュニティでは親しみを込めて「歌ってみた」と呼ばれることが多く、現在では文化の総称としても用いられています。
歌うための音源にまつわる用語
歌ってみたを制作したり、カラオケ動画を探したりするときに必ず目にするのが、伴奏音源に関する言葉です。同じ楽曲でも、用意されている音源の状態によって呼び方が異なります。
off vocal(オフボーカル) / inst(インスト)
ボーカルが入っていない、伴奏だけの音源のことです。インストゥルメンタルの略で「inst」と表記されることもあります。ボカロPが「歌ってみた」などの二次創作向けに公式に配布している場合が多く、歌い手はこの音源に合わせて自分の歌を録音します。
また、配布音源には以下のようなバリエーションが存在することがあります。
- コーラスあり(chorusあり):サビなどのハモリや掛け声が最初から伴奏に含まれている音源。メインボーカルだけを録音すれば形になりやすいのが特徴です。
- コーラスなし(chorusなし):バックコーラスも含めて完全に声が抜かれている音源。ハモリパートもすべて自分で歌い分けたい場合や、MIXで細かく調整したい場合に使われます。
キー変更(+ / -表記)
原曲の音域が高すぎたり低すぎたりする場合に、音の高さ(キー)を上下に変更することを指します。「+2」「-3」のように半音単位で表記されます。自分の声の魅力がもっとも発揮できる音域に合わせて調整して歌うことは、歌ってみたにおいてごく自然な表現方法のひとつです。
尺や参加スタイルを表す用語
動画の長さや、何人で歌っているかを表す言葉もよく使われます。最近では短尺動画の流行もあり、これらの区別がより重要になっています。
ワンコーラス / 1C
楽曲の最初から、1回目のサビが終わるまでの部分を指します。曲全体の半分ほどの長さになるため「ハーフ」と呼ばれることもあります。短い時間で手軽に聴けるため、SNSのショート動画や、気軽に投稿してみたい初心者向けの形式として広く親しまれています。
フル(フルコーラス)
ワンコーラスに対して、楽曲を最初から最後まで省略せずにすべて歌っている動画を指します。間奏やラスサビの盛り上がり、曲の結末まで含めて表現するため、本格的に作品を作り込みたいときに選ばれます。タイトルに「【フル】」と記載することで、リスナーに最後まで聴ける動画であることを伝える目印になります。
コラボ / 合唱
ひとつの楽曲を複数の歌い手で歌い分ける形式です。
- コラボ(デュエットなど):2人または少人数でお互いの歌声を掛け合わせ、パートを交代しながら歌う企画です。お互いの声の相性やハーモニーを楽しめます。
- 合唱:大勢の歌い手の歌声を重ねて、壮大なスケール感を出した動画です。歌い手自身が企画して集まる場合と、制作者が複数の既存カバー音源を許諾を得て編集し、ひとつの動画にまとめる場合があります。
用語を知ることで動画の背景が見えてくる
これらの言葉は、ただの記号ではなく「その動画がどのような意図で作られたか」を伝えるメッセージでもあります。
「off vocal」を探すときは、ボカロPが二次創作の利用規約(ガイドライン)をどのように提示しているかを確認するきっかけになりますし、「本家」という言葉には原作者への感謝と敬意が込められています。
動画を視聴するときはタイトルや説明欄の用語から制作のこだわりを感じ取り、自分で動画を投稿するときは適切な言葉を使って自分の作品の形をリスナーに伝えてみてください。言葉の理解が深まることで、ボカロや歌ってみたの文化がより身近に、魅力的に感じられるはずです。